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最高裁判所第三小法廷 昭和27年(あ)5293号 判決 1954年3月02日

本籍

山口県厚狭郡船木町字宮本一〇二番地

住居

福岡市高畑新町三五番地 瀬川方

興行師

中村保

大正一五年二月二四日生

本籍

東京都荒川区南千住町一丁目一七番地

住居

同都同区同町六丁目一九三番地

踊子

ミミー丸山こと

丸山静子

大正一二年一二月七日生

本籍

佐賀県神埼郡三田川村大字豆田一四八二番地

住居

福岡市上高宮六八番地

会社取締役

蠣久保司

明治三九年三月三一日生

右被告人中村保、同丸山静子に対する公然猥褻、同蠣久保司に対する公然猥褻幇助被告事件について昭和二七年八月三〇日福岡高等裁判所の言渡した判決に対し各被告人から上告の申立があつたので当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件各上告を棄却する。

理由

弁護人辻丸勇次の上告趣意(後記)について。

論旨第一は、要するに法令違反の主張に帰し刑訴四〇五条の上告理由に当らない。(なお原判決が控訴趣意第三点について判示するところは、劇場責任者又は興業主は、演技者の演技が猥褻その他公序良俗に反することを認識した場合、これが公開を防止するため有効な措置をとるべき条理上当然の義務があるという趣旨の判断をした上、第一審判決の認定した事実によつて、劇場責任者たる被告人蠣久保司は、被告人丸山静子の判示演技を目撃しながら、同被告人及び興業主たる被告人中村保に対し微温的な警告を発するに止め、依然その公演を継続せしめ判示各犯行の遂行を容易ならしめたのであるから他の被告人両名の公然猥褻の行為を幇助したものであること明らかであると判断したのであつて、その判断は相当でありまた所論のような条理上の矛盾は認められない。)所論第二は、被告人丸山静子の所為について原審と異なる独自の証拠判断の下に原判決の事実誤認を主張するのであり、また所論第三は、被告人中村保について共謀の事実がないという独自の見解を主張する単なる事実誤認の主張であつて、いずれも、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。

弁護人山崎信義の上告趣意(後記)第一点及び第二点について。

所論第一点は、事実誤認、採証法則違反を主張するものであり、第二点は、法令違反の主張であつて、いずれも刑訴四〇五条の上告理由に当らない。(なお第一点の所論は全く独自の見解によつて原審の証拠の取捨を非難するに過ぎず、また第二点については、辻丸弁護人の論旨第一について説明したとおり論旨主張のような事情を認めることはできない)。

同第三点について。

所論は、法令違反の主張に過ぎないから刑訴四〇五条の上告理由に当らない。そして本件のような演技が公然猥褻の行為に当るかどうかを判断する資料としてこれを観覧した証人を取り調べる場合、証人が観覧によつて生じた感想を述べることは、事案の性質上証人の実験した事実のうちに当然包含されるのであつて、これを証人の意見又は根拠のない想像ということはできない。従つて原判決になんら採証法則の違反はない。

その他記録を調べても刑訴四一一条を適用すべき事由は認められない。

よつて同四〇八条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 井上登 裁判官 島保 裁判官 河村又介 裁判官 小林俊三 裁判官 本村善太郎)

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